病気うつさず、うつされず

楠元 真由美総合病院鹿児島生協病院

院内感染対策委員会  小児科医師

楠元 真由美 (くすもと まゆみ)

2008年12月 掲載


 

病気うつさず、うつされず


 院内感染対策委員会は、病院内で集団感染を引き起こす可能性のある病気や病原体に対して、感染が広がるのを防ぐための手立てを考えて実施しています。例えばノロウイルス感染を広げないためにどうしたらよいか、色々な抗生剤が効きにくくなる薬剤耐性菌を増やさないためにはどうすべきか、といったことを考えて業務手順を見直したり、治療薬の使い方を検討したり、職員に対して必要な教育や予防接種をしたり、また残念ながら院内感染が起こってしまったらどこに問題があったのかを検証したりする組織です。

今回は院内を飛び出して、医療生協全体の感染対策に挑戦したいと思います。そろそろ風邪やインフルエンザが増えてくる時期になりました。このような感染する病気を病院や医療施設を利用する方々の間で広げないために、ぜひとも皆さんのご協力をお願いしたいと思います。

呼吸器衛生/咳エチケット

さて、「呼吸器衛生/咳エチケット」という言葉を聞いたことはありませんか?これは2003年に世界各地でSARSの大流行が発生したのを契機に提唱された感染予防策で、最近では時々テレビなどでも話題になっているようです。
かぜやインフルエンザ、そのほか咳や鼻水が出る病気をおこす病原体は、ほとんどが咳、くしゃみ、あるいは話をするときに、つばの中に混じって飛んでいきます(これを飛沫といいます)。そしてその飛沫を周りにいた人が吸い込むと感染してしまいます。また咳やくしゃみをするときに口を覆った手にも病原体は付着しますが、その手で触ったところにも病原体がついてしまいます。そこを他の人が触って、その手で何かを食べたり、鼻や目を擦ったりすることでも感染する可能性があります。こういった形で感染が広がっていくのを防ぐ方法として、「呼吸器衛生/咳エチケット」という考え方が生まれました。海外では、習慣として身につくように、幼稚園児から教育されているようです。

ポイントは以下の5つです。

 

● 咳や鼻水が出るときにはマスクをすること

● 咳やくしゃみをするときには、口と鼻をしっかりティッシュで覆うこと

● 使用後のティッシュはすぐに捨てること

● 咳やくしゃみをした後、鼻をかんだ後、痰を出した後はすぐに手を洗うこと

● 咳が出るときには、隣の人と1mほどの距離を保つこと

 

患者ではなくても・・・

病院や介護施設、リハビリ施設等あらゆる医療施設に入る場合には、咳、鼻水、くしゃみといった症状があるすべての人がマスクを着用し、ウイルスなどの病原体が広がるのを防ぐことが大切です。受診する患者さん、入院している患者さんだけでなく、職員、付き添いのご家族、見舞い客など、病院に出入りするすべての人が協力して行うことが肝要です。

手をきれいに保つこと

病原体は手や、病原体がついた手で触ったドアノブ、椅子のような環境中でも数時間生きています。そこを触った人の手にくっつくと、その手で何かを食べたり、その人が目や鼻を擦ったりすることで感染することがあります。 まずは環境中に病原体を広げないために手を洗うこと。そして環境中には病原体がいるものと考えて、どこかを触った手でそのまま食べたり飲んだりせず、帰ったら手をきれいに洗うこと。「手を洗う」方法としては、水道で洗うのが一般的ですが、近くに水道がなければアルコール手指消毒も利用できます。

外来では・・・

咳をすると飛沫は5~6m飛んでしまいますが、マスクをするとその距離は短くなり、約1m離れていれば飛沫による感染を防げるとされています。どこの病院も待合のスペースが十分ではないので、他の患者さんから1m以上離れて座るのはなかなか難しいのですが、咳がひどいときにはできるだけ他の患者さんと離れて座っていただけると助かります。受診なさった際に、スタッフの方から少し離れた席でお待ちいただくようお願いすることがありますが、このような理由によるものですのでお気を悪くなさらないでください。

また、とてもひどい咳をしている患者さんの場合には、周囲にいらっしゃる方に感染を広げないよう、先に診察させていただく場合があります。皆さん長い時間順番をお待ちのことが多く、まことに心苦しいところではありますが、「病院に行って、病気をうつされた」という残念なことを起こさないための方策です。ご了承いただければ幸いです。

呼吸器衛生/咳エチケットは、今のところ医療機関を利用すると人々が対象とされていますが、人が集まるところではどこでも取り入れた方がよいのではないでしょうか。健康増進活動の一つとして、まずは医療生協組合員の方々の間で広まり、定着し、周囲の方々へも広がっていくことを期待しています。

 

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