運動器疾患について

川野 大介

総合病院鹿児島生協病院

整形外科

川野 大介 (かわの だいすけ)


 

運動器疾患について


2010年までを世界保健機関(WHO)が "運動器の10年"として位置づけており、10月12?20日が世界運動週間にあたります。

2004年の国民生活基礎調査の有訴率では、男性では腰痛が1位、肩こりが2位となっており、女性では肩こりが1位、腰痛が2位となっています。介護にならないまでも生活に何らかの支援を必要とする「要支援の原因」をみると、4位が骨折・転倒、5位が関節症となっています。いずれも運動器の障害や機能不全です。さらに、運動器に関する疾患や状態としては、骨粗しょう症、変形性関節症、関節リウマチ、スポーツ障害、四肢外傷、身体障害、要介護状態などがあります。

老若男女問わず、多くが困っている肩こりと腰痛について簡単にお話ししましょう。

運動器とは?

さて、"運動器"という耳慣れない言葉をご存知でしょうか?
骨・関節・筋肉・腱・靭帯・神経などの身体を支えたり動かしたりする組織・器官の総称が"運動器"です。自分自身で内臓の動きを変えることはできませんが、運動器は自分の意思で動かせ、かつ生活の質(QOL)を決める重要なものです。

これまでは、運動器の障害は生命の危険に至ることが少ないために、話題性に乏しく、関心はあまり高くありませんでした。運動器に痛みや支障が発生してから、その大切さに気づくのが実状でした。あたかも、日常では空気や水の重要さに関心を払わずに過ごせますが、大気汚染や断水になってみて、初めて空気や水の大切さに気づくことと似ています。

肩こりについて

首すじ、首のつけねから肩または背中にかけて張った、凝った、痛いなどの感じがし、時に頭痛や吐き気を伴う場合もあります。

 

●原因

首や背中が緊張するような姿勢での作業(パソコンなど)、姿勢のよくない場合(猫背や前かがみ)、運動不足、精神的ストレス、なで肩、連続して長時間同じ姿勢をとること、ショルダーバッグ、冷やしすぎなどが原因となります。

 

●予防と治療

肩こりは予防が大切になります。同じ姿勢を長く続けない、蒸しタオルなどにより肩を温めて筋肉の血行をよくし疲労をとる、適度な運動や体操をする、入浴し体を温めリラックスする。

治療法としては、運動療法(筋肉の血行をよくする、コリをやわらげ筋力強化)、温熱療法(蒸しタオル、入浴など)、安静、薬物療法(筋緊張緩和剤、局所注射、外用剤など)を行います。もちろん明らかな原因がある場合は、その治療が必要です。

腰痛について

腰痛は生活習慣病のひとつと考えられるほど、日常の姿勢や動作が深く関係しています。腰に負担をかけないような姿勢と動作を心がけることが予防と治療の原則になります。下肢や臀部の痛みやしびれなどの症状を伴う場合もあります。

 

●原因と分類

代表的なものは、椎間板性腰痛、椎間関節性腰痛、筋肉性腰痛、骨性腰痛、姿勢性腰痛、心因性腰痛などがあります。その他、内臓の病気が原因で起こる腰痛もあります。

 

●予防と治療

寝る時の姿勢:背骨は体の横からみると波打っています。柔らかすぎるベッドや布団は沈み込んでしまいよくありません。固めのマットがおすすめです。横向きで膝を軽く曲げて丸まると腰に負担がかかりません。

椅子に座る時の姿勢:高さは太ももが水平か、膝より少し高いぐらい。背もたれに寄りかからず姿勢よく座りましょう。

物を持つ時の姿勢:中腰で家事や仕事をすると危険です。膝を曲げて腰を落として、体にできるだけ近づけて持ちましょう。

治療法は、肩こりと大きくは変わりませんが、薬物療法では消炎鎮痛剤や各種ビタミン剤も使用されます。牽引療法やコルセットなどの装具療法が効果ある場合もあります。

診断はどうするか?

肩こり、腰痛ともに問診や身体所見(筋肉や神経の診察など)が重要です。補助診断として、レントゲン、MRI、CT、神経伝導速度、筋電図などがあります。

最後に

運動は脳や神経の働きを活発にし、生命を支えます。適切な運動を続ければ、筋肉が鍛えられ、関節の柔軟性も保たれ、腰痛や関節痛が和らぎ、骨粗しょう症や転倒による骨折の予防にも役立ちます。また、心のストレスも和らげてくれます。

年をとっても若々しい身体を保ち、社会に参加し、自立した幸せな人生をまっとうするには運動は欠かせません。

 

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