認知症について

tanoue坂之上生協クリニック
院長

日本内科学会認定医
日本消化器病学会認定医

田上 昭観 (たのうえ しょうかん)


 

認知症について

 

今年になって認知症についてのテレビ番組が多くなりました。先日は幻視を伴う認知症が取り上げられ、NHKの「今日の健康」でも認知症が特集されました。認知症は私たちにとって気になる病気の一つになってきています。 認知症は一般的には神経内科、精神科で診療されていますが、鹿児島では脳外科にかかる人が多いようです。私は1999年から認知症にかかわる機会があり一般内科医として取り組んできました。一昨年からは物忘れ外来を谷山生協クリニックで始めています。いろいろな相談が寄せられますが、薬物的治療が確立していない現在、どう対処するのか、どんな病気なのか、これからどうなるのかなど様々な心配があります。今回は7年間の経験をもとに認知症について考えてみたいと思います。

認知症とは何か

認知症は脳にアミロイドという物質が蓄積して起こる脳細胞の病的変化によって起こります。記憶の障害、時間がわからない、今どこにいるのか場所がわからない、人の顔が区別できない、ボタンが留められないなどの症状が現れます。 年をとると物忘れは誰にでも起こりえますが、認知症の物忘れとどう違うのでしょうか。物をどこに置いたかわからなくなり、自分のとった行動を最初からおさらいして、思い出すことがあります。これは「ど忘れ」です。

一方、認知症の物忘れはある物事が抜けてしまうような物忘れです。具体例を挙げると「高齢のお年寄りが交通事故を起こしたのですが、そのこと自体を忘れてしまい家族にも何も知らせていないため、家族は警察からの電話で後日そのことを知る事態になった。」あるいは「留守番をしていて、電話があり大切な仕事の伝言を聞いたのに忘れてしまい、相手からの催促の電話で、家族にわかるという事。」「町内会費を払ったことを忘れて何回も払いに行く。」などの事例があります。 このようにある出来事全体が抜けてしまう物忘れが認知症の物忘れです。

認知症の診断

それではどうやって診断するのでしょう。認知症を長年診察している医師は診ただけで診断がつくと言いますが、診察や家族の話を聞いても正しく診断できる確率は60%台といわれています。

これにMRIやCT、さらにスペクト(脳血流シンチ)を組み合わせると84%に上がるといわれています。正確な診断を得るためには半年、あるいは一年と経過を観察しなければなりません。

CTやMRIなどのレントゲン検査では脳梗塞の有無、硬膜下血腫の有無、正常圧水頭症などの疾患があるかどうかわかります。血液検査では貧血に関連した認知症、甲状腺機能低下による認知症、ビタミン欠乏による認知症などを区別することができます。鹿児島生協病院では特にスペクト(脳血流シンチ)をとり、脳の血流の変化をみることでアルツハイマー型認知症の早期診断に役立てています。

認知症の治療

診察の結果、認知症と診断された場合に、一番大切なことは家族の理解です。認知症についての理解、薬についての理解が必要です。家族の理解があれば患者さんは安心して暮らすことができます。現在、認知症を治す特効薬はありません。唯一、症状の進行を遅らせることができるという薬があります。この薬は認知症の60%の人に何らかの効果がありますが、特に今話題になっている幻視を特徴とするレビー小体型認知症によく効きます。漢方薬では抑肝散が興奮を抑える作用があります。また、当帰芍薬散や八味地黄丸が効果を示した例もあります。薬で物忘れ自体を改善することは難しいのですが、意欲や集中力が出てくることがあります。

介護について

この病気で、一番大切なことはその人が安心して暮らせる環境を作ることです。日本では介護というと、お風呂に入れる、食事を介助する、排泄の介助、おむつ交換などの身体介護が主な内容ととられてきました。しかし認知症ではこのような介護のほかに精神的あるいは心理的側面での援助がないと問題行動が起きると言われています。

1999年イギリスのトム・キッドウッドという人が「パースンセンタードケア」という考え方を発表しました。この「その人を中心にした介護」という考え方をその人らしさの出る介護と言っている人もいます。その人の人生、その人の性格、趣味、家族環境などを知り、その人らしさを出してもらえるような環境作りをしていくということです。トム・キッドウッドはその方法として「バリデーション」「回想法」といった手法は「パースンセンタードケア」の対応の仕方だと言っています。私たちもこの2つの方法を参考にした「脳活性化」を集団で行うグループ活動を取り組んでいます。

気になる方は一度ご相談ください。

 

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